社会に出るとよく、「学校で勉強したことは役に立たない」とか、「高校や大学で学んだことは実社会では使う機会がない」という言葉を聞きます。
私は理系の大学に進みましたが、コンサル会社に入る前は製造業や工場などの職場で理系の仕事に就きました。冒頭の言葉とは反して、(今も含めて)直接的、または間接的に仕事で学んだことが役に立っているという実感があります。
例えば、学生の時に化学物質の分解速度について学びましたが、その十数年後に就職した電気部品の製造業でその知識は役に立ちました。担当した仕事は電気部品の耐久性を調べる仕事でしたが、その基礎となる理論が全く同だったのです。その仕事を引き継いだとき部内でそれを理解している人が(ほとんど)いなかったこともあり、本当に助かりました。
また、学生時代には苦手でしたが、毎週英語の論文を読んだ経験は、後にISOの規格を原文の英語で読んで理解するのに役立ちました。他にもいろんな学生時代に学んだことが自分の人生の中で役に立っていると感じることは多くあります。
ですから冒頭のよく聞く言葉は違和感を覚えます。もし学んだことが活かせないというのであれば、社会に出てから学んだことはどうして活かせるのでしょうか。
もちろん社会に出てから学ぶことは、学ぶときにどのように活用するか、目的がはっきりしている場合が多いので、容易に活用できるという面はあります。
しかし、よくよく考えると、社会に出てから学んだことも、それを応用していろいろな場面で活用できる人と、設定された場面でしか活かせない人がいます。その差は確かにあります。
当然、高校や大学で学ぶことは高等教育であったり専門性が高かったりするので、その後にその専門の知識を活かせる道に進まないと、知識を活かせる場面には遭遇しにくいのかもしれません。ですが、自分の経験から言えば、必ずしもその専門の分野に進んでいるとは言えない場合もあり、そこは重要ではないのではないかと思います。そもそも多数派は学んできたことに近しい仕事を選ぶのではないのかと思いますから、私が経験してきたそういう場面はもっと多くてもおかしくないと思います。
前述の私が学校で学んだことを活かせた場面では、常に壁にぶつかっていた時でした。そんな時に自分よりもその問題に近いところの学部を卒業した人たちに相談しましたことがあります。こんな言い方をすると失礼かもしれませんが、相談した人たちは総じて全く力になってもらえませんでした。厄介な相談をされて断られたという感じではなく、それについては大学で学んだことは役に立たないからという感じでした。
なので、私の実感ですが、何を学んできたかというよりも、社会では学んだことを如何に活かすことが出来るかということの方が大事なのではないかと思います。
極論すれば、科学理論から人生をどう生きればいいのかの答えを見出すことだって出来ます。連立方程式から絵画の美しさを知ることに繋がることもあるかもしれません。
学ぶことは可能性を広げることですが、可能性を現実のものにすることが、学んだことを活かす力です。
一から学びなおすことは大変ですが、学んだことを活かす力はいつからでも挑戦できると思います。むしろその心持ちが一番大事だと思います。
少しの心持ちで、学んだことが無駄ではなかったと思えるなら、それはとても幸福なことです。特にこれから学ぶ学生の方には、学校の勉強は役に立たないと決めつけないで欲しいと切に思います。
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