職長教育は、職場の安全と労働者の健康を守るために、新たに職長に就任する者に対して実施される必須の教育です。労働安全衛生法第60条に基づいて設定されたこの教育は、労働災害を防止するために重要な役割を果たします。2023年4月1日の法改正により、その対象業種はさらに拡大され、多種多様な職場での安全衛生管理の質の向上が必要とされています。

職長教育とは

職長教育は、労働現場での労働者の安全と健康を守るために不可欠なプログラムです。労働安全衛生法に基づき制定されたこの教育は、職長が適切な安全衛生管理を行う上で必要な知識と技術を習得することを目的としています。

職場の安全を確保し、すべての労働者が健康に作業を続けられるよう、安全衛生に関する法律、危険予防策、緊急時の対応策など、幅広いトピックについて学びます。職場での安全文化の醸成と労働災害の予防に向けた重要な一歩となります。

職長教育は新規に職長になる者が受けなければならない教育

職長教育は資格試験とは異なり、法律(安衛法第60条)によって職長に義務付けられた教育プログラムです。この教育を受けることで、職長は職場での安全衛生管理に必要な知識を習得し、労働者への適切な指導や監督を行う能力を養います。

重要なのは、職長がこの教育を通じて、職場の安全文化をリードし、労働災害の発生職場のリーダーとして、職場でのコミュニケーションの向上やチームワークの促進にも寄与します。

職長の役割

職長は、職場の安全と労働者の健康を確保するための中心的な役割を担います。彼らは労働安全衛生法に基づく指導や監督の責務を持ち、労働現場での安全衛生管理の実践者です。

職長の責任には、安全な作業方法の確立、労働者の安全教育、作業環境の危険因子の識別と管理、緊急事態への迅速な対応が含まれます。また、職長は労働者からの安全に関するフィードバックを受け、改善策を講じる役割も果たします。

このようにして、職長は職場の安全衛生水準を向上させ、労働災害のリスクを最小限に抑える重要な役割を担っています。

労働安全衛生法施行令の改正による対象業種の拡大

 2023年4月1日施行の労働安全衛生法の改正により、職長教育の対象となる業種が拡大されました。これにより、より多くの職場で安全衛生管理の質の向上が期待されています。

拡大前の対象業種

・建設業

・製造業

※ただし、次に掲げるものを除く。

食料品製造業・たばこ製造業(うま味調味料製造業及び 動植物油脂製造業を除く。) 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。) 衣服その他の繊維製造業 紙加工品製造業(セロファン製造業を除く。) 新聞業・出版業・製本業及び印刷物加工業

・電気業

・ガス業

・自動車整備業

・機械修理業

改正前の職長教育対象業種は、建設業や製造業など、物理的リスクが特に高い分野に限られていました。これらの業種での作業には、重機械操作や危険物質取扱いなど、高度な安全管理が求められます。建設業では、建築物の建設や土木工事の際の安全確保が、製造業では、機械操作中の事故防止や化学物質使用時の安全対策が職長の主な責務となっていました。職長は現場での安全衛生管理の専門家として、事故防止と労働環境の改善に不可欠な役割を果たしています。

新しく対象となった業種

製造業のうち各業種

・食料品製造業 ※うま味調味料製造業および動植物油脂製造業に関しては以前から対象

・新聞業

・出版業

・製本業および印刷物加工業

これらの業種の追加により、オフィスワークや店舗運営、教育現場、医療施設など、以前は職長教育の対象外であった職場での安全衛生管理が強化されることになりました。これに伴い、新たに対象となった業種の職長は、労働環境におけるリスクの特定と評価、労働災害の予防策の立案と実施、職場での健康促進活動など、安全衛生管理に関する広範な知識と技術を習得することが求められます。

これにより、職場での事故や健康障害の発生を未然に防ぎ、すべての労働者が安全かつ健康に働ける環境の実現に貢献することが期待されています。

職長教育の講習内容

職長教育の内容は、労働安全衛生法に基づき、特定の業種の職長に新任する際に受講が義務付けられている教育です。具体的には、職長教育では以下のような内容が含まれます。

実施内容

講習時間
作業方法の決定及び労働者の配置に関すること2時間
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること2.5時間
危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること4時間
異常時等における措置に関すること1.5時間
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること2時間

合計

12時間

具体的内容と期待される効果

作業方法の決定及び労働者の配置に関すること

効率的かつ安全な作業方法の選定と労働者の配置は、労働災害を防ぐ上で重要な要素です。

職長教育では、作業リスクの評価方法、安全な作業手順の策定、労働者の能力や健康状態に合わせた配置計画の立案など、具体的なスキルが教えられます。これにより、職長は労働者が安全に作業できる環境を整えることができます。

労働者に対する指導又は監督の方法に関すること

職長は、労働者への安全指導と監督において中心的な役割を果たします。教育プログラムでは、有効なコミュニケーション技術、教育と訓練の方法、労働者のモチベーションの向上策などが取り上げられます。さらに、労働者からの安全に関するフィードバックの収集とそれに基づく改善措置の実施方法についても学びます。

これらのスキルにより、職長は労働者の安全意識を高め、安全な作業環境の維持に貢献します。

危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること

職場の安全を確保するためには、危険性や有害性の定期的な調査と、その結果に基づく対策の講じ方を知ることが不可欠です。職長教育では、リスク評価の方法、危険性・有害性の特定と評価、対策といったテーマが扱われます。また、事故や健康障害のデータを分析して予防策を立てる方法についても学びます。

これにより、職長は職場の安全衛生管理を効果的に実施できるようになります。

異常時等における措置に関すること

緊急事態や異常事態が発生した際には、職長が迅速かつ適切な対応を取ることが求められます。このために、職長教育では緊急事態対応計画の作成、事故発生時の初動対応、労働者の避難誘導方法などについて学びます。また、事故発生後の報告手続きや事後処理についても学習します。

これらの知識とスキルを身につけることで、職長は緊急時における職場の安全と労働者の健康管理に貢献します。

その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること

職場での労働災害を防ぐためには、日々の安全管理活動が重要です。職長教育では、安全衛生協議会の開催方法、安全パトロールの実施、労働者の安全衛生教育計画の策定など、労働災害防止のための活動について学びます。さらに、新しい安全技術や機器の導入、作業環境の改善提案、職場の安全衛生文化の醸成といったテーマも取り上げられます。

これらの活動を通じて、職長は労働者が安全に作業できる環境を維持し、職場全体の安全衛生水準を向上させることができます。

職長教育のご依頼

出向いて講習を実施いたしますので、5名以上での参加をお願い致しております。
随時受け付けておりますので、お問合せより申し込みください。
講習日時は自由に設定できます。例えば、4時間の講習を3回に分けての実施も可能です。